インボイス制度が海外取引に及ぼす影響は?
2023年10月1日よりインボイス制度が開始されました。
それにより、海外からの仕入れにも影響を及ぼす可能性があります。
海外仕入れへの仕入税額控除へのインボイスの必要有無については、
取引先である海外事業者事業拠点や事業登録の内容によって判断が分かれます。この記事ではインボイス制度が開始される事によって海外仕入れに及ぼす
影響と注意点などをなるべく分かりやすく解説させて頂きます。
目次
取引先の外国法人に確認すべき注意点
インボイス制度で影響を受ける海外取引
インボイスの影響を受ける可能性があるのは、日本への消費税納税義務が生じる取引です。
具体的には、以下の条件に当てはまる国外の企業との取引では、PEの有無にかかわらず課税対象となる可能性があります。
※PEとは・・・事業を行う一定の場所であって企業がその事業の全部又は一部を行っている場所の事。
- 資本金が1,000万円以上の国外の企業である
- 仕入れの代行を国内企業に委託している
- 日本国内で商品を売買している
- 日本国内でサービスを提供している
- 国内の企業とBtoB取引をしている
※BtoBとは・・・企業間での取引の事。
一度受注が決まれば長期間に渡って発注が行われることが多く、また一度の発注の取引額が大きい。
国内にPEがない場合は法人税の対象外となります。
ですが消費税の場合は、この原則は関係なく外国法人であっても、上記の条件のいずれかに当てはまる取引先の場合は消費税の課税対象かどうか、適格請求書発行事業者登録を行っているかどうかの確認が必要になってきます。
そのため、外国法人と日本で取引する場合、消費税の課税事業者であればインボイス制度の対象となります。
もし、取引先の外国法人が課税対象者であれば、仕入税額控除を受けるためにも適格請求書発行事業者への登録を依頼しましょう。
インボイス制度で影響を受けない海外取引
以下の条件に当てはまらない海外事業者との取引であれば、インボイス制度の影響は受けません。
・課税期間の基準期間の課税売上が1,000万円を超えている
基準期間の課税売上高とは・・・消費税が課税される取引金額の売上金額(消費税額及び地方消費税額を除きます。) と輸出取引などの免税売上金額の合計額をいいます。
・特定期間の課税売上が1,000万円を超えている
特定期間とは・・・原則として、前事業年度の開始の日以後6ヶ月の期間をいいます。 この特定期間で、課税売上高が1000万円を超えている場合には、課税事業者となります。
・課税期間の基準期間がない法人で課税期間開始日の資本金や出資金が1,000万円以上を超えている
法人の課税期間とは・・・その法人の事業年度となり、新たに法人を設立した場合には、課税期間の開始の日は設立の日、終了の日はその事業年度の末日となります。
インボイスの影響を受けない海外取引の代表例は、輸入業者の行う輸入取引です。輸入取引においては、輸入申告を行う輸入業者は、税関へ輸入消費税を納付しなければなりません。
この納付を経て、保税地域から物品を引き取る際に発行される輸入許可通知書には、適格請求書と同等の効力が認められています。
そのため、輸入業者は海外の輸出業者に適格請求書を求めることなく、輸入消費税を仕入税額控除の対象にできるのです。
〜海外取引でもインボイス制度の影響を受けるケースがある〜
インボイス制度は日本国内の消費税に関わるものですので、日本企業や個人事業主に影響があることはイメージしやすいかもしれません。
しかし、海外取引であっても、取引の内容次第ではインボイス制度の影響があることもあります。
どのようなケースで影響があるのか確認し、早めに必要な対応を取引先の外国法人に取ってもらうようにしましょう。
海外取引のインボイス対応と消費税の取り扱い
売り手が外国法人の場合と買い手が外国法人の場合の2つに分けて説明致します。
売り手が外国法人である場合
消費税法上、消費税の課税対象となる取引は「国内取引」「輸入取引」の2つです。
輸入取引には輸入消費税がかかりますが、輸入業者が行う輸入取引では仕入税額控除を受けるための適格請求書は不要です。
そのため、輸出側が国内取引を行っていない外国法人であれば、特別な対応をする必要はありません。
国内取引のある外国法人から輸入する場合や、他社から委託を受けて輸入を代行する場合などは、該当する消費税の取り扱いを確認する必要があります。
海外から外国貨物を保税地域で引き取る場合は輸入取引に該当するため、通常通り買い手である輸入者は輸入許可書を保存しておくことで輸入消費税として仕入税額控除の適用を受けることができます。
したがって、このとき買い手の内国法人には適格請求書保存等の要件はありません。
また売り手が国内での取引がある外国法人である場合には、その外国法人が国外事業者用の適格請求書発行事業者の登録を受けていれば、買い手はその外国法人からの適格請求書の仕入税額控除は受けることができます。
日本で事業を行う外国法人が適格請求書発行事業者となるには、国外事業者用の適格請求書発行事業者の登録の手続きが必要となります。
また、2023年4月現在、国税庁長官の登録を受けた国外事業者が行う消費者向け電気通信利用役務の提供について、その仕入税額控除を可能とする登録国外事業者制度がありますが、インボイス制度の導入に伴い2023年10月1日で廃止されます。
登録国外事業者制度とは・・・一定の要件を満たす国外事業者のうち、登録国外事業者制度の登録を受けたもの
外国法人が売り手である場合には、相手が適格請求書発行事業者であるか、その取引が国内取引であるかどうか確認しましょう。
買い手が外国法人である場合
買い手が外国法人である場合、その外国法人の日本での申告の有無にかかわらず、売り手の会社が適格請求書発行事業者であれば適格請求書を発行する義務があります。
外国法人へ輸出する場合は、輸出先の事業者がどのような事業規模であっても、輸出する側である自社が国内における課税事業者ならば、適格請求書を発行する義務が発生します。
つまり、国内へ販売するときと同様、一取引先として適格請求書を発行すればよいということになります。
輸出先の国がインボイス制度を導入しているならば、採用しているフォーマットに合わせた適格請求書を用意する必要が出てきます。
外国法人が行う輸入手続きを国内法人が代行する場合
国内にPEを持たない外国法人から顧客が商品を輸入したい場合、PEのない会社は国内で商品を物流ルートに乗せる手段が限られます。
その場合、外国法人から委託された国内の代行業者が輸入手続きや、販売までの商品保管を代行するパターンが考えられます。
このパターンは、商品の販売そのものは外国法人と顧客との間の取引です。
そのため、代行会社が保管する商品は「外国法人と顧客との売買が成立する」ことで初めて外国法人から代行会社へ一時的に所有権が移転します。
そして代行会社が外国法人に代わって「売買代金を顧客から受領し、立て替える」ことで顧客へ所有権が移転し、最終的に取引が成立する流れとなります。
商品の所有権は、輸入および保管中は外国法人のままであるため、代行会社には輸入申告の義務と輸入消費税の納付が発生します。
国内での商品仕入れと同様の消費税が課税されます。
輸入者・所有権者は外国法人、一時預かるのは代行会社という複雑な構図となりましたが、ここで外国法人が免税事業者かそれとも課税事業者かによって、代行会社が仕入税額控除を受けるための対応が変わるのです。
外国法人が免税事業者の場合
※以下、国内代行者をA社 ・ 外国法人をB社とします。
B社が免税事業者の場合、A社との国内取引に関しては納税申告の義務がありません。
この場合、A社の商品の仕入は国内取引に係る課税仕入れとして扱われます。
B社は適格請求書を発行できませんが、A社は支払対価の額をもとに消費税額を計算し、仕入税額控除の対象として扱うことが可能です。
外国法人が課税事業者の場合
※以下、国内代行者をA社 ・ 外国法人をB社とします。
どちらの場合でも仕入税額控除を受けること自体は可能ですが、手続きや計算方法が異なるため注意が必要になります。
B社が課税事業者の場合、A社は通関業者であると共にB社の国内における納税管理人としても扱われ、B社にはA社の倉庫の所在地(国内)での納税義務が発生します。
※通開業者とは・・・税関を通るために必要な業務を代行すること
A社とB社との国内取引は商品販売に係る消費税の課税と、輸入に係る消費税の仕入税額控除の対象となるため、B社には適格請求書を発行してもらわなくてはなりません。
実質的輸入者と輸入申告国内人が異なる場合
国外企業と自社が直接売買契約を結び、国内の輸入代行業者に輸入手続きだけを代行してもらっているケースを考えて見ます。
輸入申告を行う輸入代行業者は輸入を代行するにあたり、負担した代行手数料や輸入消費税を自社へ請求し、自社もそれに応じています。
実質的に輸入消費税を納めている形になるため、自社としては仕入税額控除を適用したいところですが、輸入の申告名義人は輸入代行業者であるため、この場合は自社が仕入税額控除を適用することはできず、輸入代行業者へ払った金額は単に国外取引の経費として扱われます。
日本国内で営業する外国法人が消費税を納税する場合
輸出入の取引がなくても、外国法人が日本国内で商品を販売したり、サービス提供をしている場合は国内取引に該当するため、消費税の納税義務が発生する可能性があります。
BtoCのみの場合は特に問題ありませんが、BtoBでそのような外国法人と自社が取引する際には、国内で適格請求書発行事業者の登録を行ってもらう必要性があります。
※BtoCとは・・・企業と消費者間の取引の事。
店頭での買い物や飲食店での食事、旅行など、日頃から個人的に利用しているものは全てBtoCです。
※BtoBとは・・・企業間での取引の事。
一度受注が決まれば長期間に渡って発注が行われることが多く、また一度の発注の取引額が大きい。
まとめ
インボイス制度は世界的に導入が始まっています。
輸入消費税に係る仕入税額控除については取引が少し複雑になっていることが多いです。
また、輸出取引と違い、輸入取引は名義が誰であるのかが重要となります。
2023年10月1日より開始されていますので、国際取引の消費税対応についてもこの機会に一度見直して、早めに対応しましょう。
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