インボイス 太陽光発電を保有している場合は影響する?

2023年10月から始まったインボイス制度はどうしてもネガティブな情報を耳にする機会が多いですが、それは太陽光発電を行い電気を売っている方にとっても例外ではありません。

インボイス制度によって電力会社からの売上が減ったり、電力会社の消費税負担が増えるために売電の機会が失われるのではないか、という不安を持っている方もいるでしょう。

この記事では、インボイス制度と太陽光発電との関係性、また太陽光発電事業者が受ける影響やとるべき対応について詳しく解説していきます。

FIT制度とは、再生可能エネルギーに分類される太陽光発電等により作られた電気を、電力会社が固定価格で買い取ることを保証してくれるしくみです。太陽光発電はパネルの設置等で多額の初期コストが発生しますが、このFIT制度によって家庭や事業者はリスクヘッジが可能となっています。

現在の制度では、売り手が課税事業者・免税事業者どちらでも、電力を買い取る電力会社による仕入税額控除が可能となっています。ただしインボイス制度が開始されたことにより、電力会社が仕入税額控除を行うためには売り手が適格請求書発行事業者に登録する必要があります。

現時点では、FIT認定を受けている発電事業者が課税事業者である場合、適格請求書発行事業者となることは必須となっています。2022年12月には、FITの新規認定を受ける際にも「インボイス発行事業者として登録を行うこと」が認定要件であると示されました。

では免税事業者はどうなるのかというと、現時点では適格請求書発行事業者になることは必須条件ではなく、今までと同様に消費税を含めた金額が調達価格となります。ただし、今後法改正等により買取価格が安くなったり、インボイス制度への参加を求められるようになる可能性はあります。

先述のとおり家庭の太陽光発電システムなどで発電した電気は、電力会社が固定価格で買い取ることがFIT制度によって義務付けられています。

売電業者の多くは消費税非課税業者の小規模事業者です。

また、太陽光発電システムを設置している一般家庭は課税の対象外です。

つまりインボイス制度が導入されても、電力会社は非課税事業者や一般家庭から買い取った電力については、仕入税額控除ができないため、その分の消費税負担が増えることになります。

その消費税負担額は58億円程度と見込まれ、一般家庭の毎月の電気料金に含まれる「再エネ賦課金」でカバーしようという方針です。

電力会社の負担増となる分を一般家庭の電気料金を値上げすることで賄おうというわけです。

この方針に対しては、多くの疑問の声が上がっています。衆議院財務金融委員会でも、野党側から「なぜ電力会社だけに国民の負担で補てんする措置をとるのか」などの質問が発せられるなど、「どうして?」という声は収まりそうもありません。

というのも、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻や、円安などの影響で燃料価格は高騰を続け、電気代の値上げが続いているからです。

空調大手のダイキン工業によると、平均的な家庭の電気代は、2021年は年間で8万2,456円でした。しかし、2022年は10万3,758円と、年間で2万1,302円上昇するとしています。一般家庭の電気代の負担も重くなっているとともに、事業者も電気代の高騰に悲鳴をあげている状況です。

重要なのは「太陽光発電を行っている事業者が受ける影響度合い」です。次からは太陽光発電事業者が影響を受けかねない点について解説していきます。

インボイス制度の開始により、太陽光発電により収益を上げる業者の収入が下がる可能性があります。売電により利益を得る権利に関してはFIT制度自体がそれを保証しており、「調達価格に消費税を含めること」も決まっているため、この制度自体が揺らぐことは考えにくいです。

ただし今後は、適格請求書発行事業者に該当しない事業者が電気を売って得る収入が少なくなる可能性があります。電力会社の納税負担が増える分、消費税分の価格が差し引かれてしまうことにでもなれば、収入が下がってしまいます。

インボイス開始後に課税事業者が免税事業者と取引を行う際、免税事業者が発行する請求書では仕入税額控除ができなくなるというリスクがあります。

そのため課税事業者は免税事業者と取引を続けるとしても、「消費税分だけ値引きする」と言われる可能性があります。

この場合に免税事業者が取れる選択肢は、多くの場合次の3つに限られます。

  • 消費税分の負担が増えることを覚悟して、適格請求書発行事業者になる
  • 素直に減額の条件を受け入れ、免税事業者として取引を続ける
  • 減額は受け入れられないと表明し、従来通りの金額での支払いを求める

インボイス制度に参加したくない場合は2、3番目どちらかの選択肢を選ぶことになりますが、どちらを選んでもデメリットがあります。

減額を素直に受け入れることで取引は継続できますが、消費税分が受け取れなくなるため売上が減ります。だからといって消費税を含めた金額の支払いを求めると、取引が打ち切られて売上がなくなるかもしれません。

このような事態が、太陽光発電事業者と電力会社の関係においても発生する可能性があります。現状では売電ができなくなり売上がゼロになるリスクこそ小さいものの、制度の変更によって売却時に消費税分が受け取れなくなる可能性があります。

現状では、FIT制度により「再生可能エネルギーの売電が確約されている」状態であるため、免税事業者がインボイス制度に参加しなくても「電気を売れなくなる」という事態に陥ることは考えにくいです。ただし、インボイス制度によって電気の買い取りを行う電力会社の負担が増えることは間違いないため、買い取りの条件が変わる可能性はあります。

実際のところ、2022年12月に資源エネルギー庁は課税事業者と免税事業者で「買取価格における消費税の取扱については、区別して設定する方向」という指針を出しました。そのため、今後は課税事業者と免税事業者において買取価格に差が出る可能性は高い、といえます。

一般家庭も事業者も、高騰する電気代に悲鳴をあげているなか、大手電力会社は軒並み電気代の値上げ方針を打ち出しています。しかも驚かされるのが、規制料金を3割以上値上げで申請している電力会社もあることです。

電力の供給はいわば生活インフラであり、公益性の高い事業です。安定して電力を供給する必要性から、大手10社が地域を独占するカタチでした。それが2016年に自由化となり、各家庭では新しい電力会社と契約できるようになりました。

新電力会社に契約先を奪われることになった電力大手は、新電力会社と契約している一般家庭の住所や連絡先などを不正に閲覧し、営業に活用するなどの不正が相次いで発覚しています。

現状では、インボイス制度が始まってもすぐに「電気が売れなくなる」可能性は低いです。ただし今後制度が変更された場合、電力会社は免税事業からは電気を買わなくなる可能性があります。

免税事業者は取引先との機会を損失しないためにも、基本的には適格請求書事業者手続きを行うべきです。ただしインボイス登録は義務ではないため、様子を見るのも一つの選択肢です。

太陽光発電事業者にとっても影響度が高いインボイス制度は、いまだ見直しが進められている段階です。しかしインボイス制度自体が廃止されることは考えにくいため、常に最新の情報を取り入れながら自身の太陽光発電所を所持していくか売却するか見極めていく必要があります。

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