インボイス 新規開業への影響
起業を検討されている方にとって起業後、最初の2年間は消費税が免除されると認識されている方は多いのですが、それがインボイス制度によりどのような影響が生じるのか、本記事にて解説致します。
目次
会社設立にも影響のあるインボイス制度
会社設立を考えているのならば、消費税納付の観点からも2023年10月1日より施行されたインボイス制度を把握しておく必要があります。どのような制度なのか、詳しくご紹介します。
会社設立時は基本的に免税事業者
まず、インボイス制度開始前の消費税の納税義務は、「基準期間の課税売上高が1,000万円超」の場合に発生します。
基準期間とは、原則として2期前(2年前)のことをいい、起業から2期以内はこの基準期間が無いことになるので、消費税の納税が免除されるというロジックになります。(消費税法9条)
「最初の2年間は消費税が免除される」との認識が一般的なのは、このルールが比較的広く周知されているところによると推察されます。
また、課税売上高が3期目以降も続いて1,000万円以下であれば、引き続き消費税の納税義務が免除されます。従って、小規模に事業を実施しているフリーランスやマイクロ法人などは「起業後ずっと消費税が免除されている」というケースも多くあります。
インボイス開始後も、消費税の納税義務に関するルールに変更はありません。従って、基準期間がない起業後2年間は原則として納税義務が免除されます。
しかし、起業直後であってもインボイス制度は適用されるため、納税義務が免除されるからといってインボイス登録を行わないでいると「得意先が消費税の控除が受けられなくなる」というデメリットが生じてしまいます。そのようなデメリットを避けるため、起業時にインボイス登録を行うと、「起業直後であっても消費税の納税義務が発生する」ことになります。
個人事業主の開業費を仕入税額控除するために必要なこと
例)
令和5年9月1日開業
インボイス制度開始と同時に登録事業者になる予定(令和5年10月1日)
令和5年7月より、開業準備開始 (店舗の賃借料が発生)
- 1,開業年の12月31日までに「課税事業者選択届出書」を提出
その際この届出書の「適用開始課税期間」に
令和5年1月1日(事業開始事業年度の初日) 至 令和5年12月31日(開業事業年度の終了日)と記載
※令和5年9月1日と、開業月を記載しないこと
- 2,インボイスの登録申請書を令和5年9月30日までに提出
※インボイスが10月1日より開始する為
Point!!!
開業費支出時点で課税事業者でなければならない
もし課税事業者選択届出書を提出しなかったら
この例の場合、登録申請書のみの提出で
「課税事業者選択届出書」
を提出しなければ
- 1,開業前の支出について、消費税の仕入税額控除ができない
- 2,消費税の納税義務者になるのが、令和5年10月1日からになるので、開業の令和5年9月1日から9月30日までの期間は免税事業者なので、消費税の納税義務は発生しない
ということになります。
開業費は控除できないデメリットがありますが、1ヶ月間は消費税の取引は免税になります。
A:開業費にかかる消費税額
B:9月中に発生する消費税の取引の結果計算される消費税の納税額
Aのほうが多いなら課税事業者選択届出書を提出し
Bのほうが多ければ、登録申請書のみの提出でいいでしょう。
- 3,令和5年中に登録事業者になった場合のみ、登録のとりやめをした場合、登録の効力が失われた年から免税事業者に戻れる
(課税事業者選択届出書を提出した場合は、2年間は免税事業者に戻れない)
※詳しくはこちらの記事にて解説しております
インボイスの登録日に所有する棚卸資産は仕入税額控除できる特例有り
開業費は支出時課税事業者になっていなければ、仕入税額控除ができないのですが、仕入に関しては免税事業者である期間に仕入れたものであっても仕入税額控除が受けられます。
つまりわざわざ、課税事業者選択届出書を提出しなくても控除を受けられるのです。
※適用を受けるためには、棚卸資産に関する一定の書類の保存が必要です
消費税の免税事業者が、課税事業者になったとき、課税事業者になった初日の前日に所有している棚卸資産(在庫)にかかる消費税額を、課税事業者になった最初の課税期間の消費税額の計算上、仕入税額控除額に含めて計算します。
逆に、消費税の課税事業者が、免税事業者となったときには、免税事業者になった初日の前日に所有している棚卸資産(在庫)にかかる消費税額を、課税事業者最後の課税期間の消費税の計算上、仕入税額控除額から除いて計算します。
このことを棚卸資産の調整といいます。
「棚卸資産の調整」はインボイスの発行をするべく免税事業者から課税事業者になった場合も適用があります。
令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間であれば、期の途中であったとしても登録事業者として課税事業者になることができます。
例えば、インボイスの登録事業者として令和6年6月1日に免税事業者から課税事業者になったのなら
令和6年5月31日の時点の保有する棚卸資産に係る消費税額をその期の仕入税額控除に含めることができるのです。
控除してもらうにはきちんと書類を保存しておかなければなりません。
棚卸資産の
品名、数量、取得に要した費用の額の明細を記録した書類
を保存が必須です。
ただし書類の保存がない場合でも災害その他やむを得ない事情により書類の保存をすることができなかったことを証明したときは控除の適用があります。
保存期間は、その書類を作成した日の属する課税期間の末日の翌日から2ヶ月を経過した日から7年間です。
個人事業 × 法人の二刀流が増える?
BtoB事業で起業すると、得意先の多くは一定以上の規模があり、消費税の納税義務があることが想定されるので、インボイス登録を行わないと「新規顧客の獲得」や「取引価格の交渉」及び「自社の信用力」といった面で不利になることが予想されます。
このため、顧客が「一般消費者(BtoC)」と「一般企業 (BtoB)」がミックスされている事業を行っている場合などは、「B to C事業は個人事業主として」「B to B事業は法人として」実施し、BtoC事業の方はインボイス登録を行わない形態が増えることも予想されます。(個人事業主・法人の組み合わせはその逆のパターンも考えられます)
個人事業と法人を兼業する、いわゆる二刀流といわれる手法です。
※ただし、二刀流は申告負担が増えますし、事業分割や経費按分などの合理性の問題も生じますので、デメリットもあります。
まとめ
今回はインボイス制度がもたらす新規開業への影響についてまとめました。
インボイス制度が開始により、新たに開業する際に今までにプラスして考慮する点や手続きが増える可能性があります。
登録は必須ではありませんが、自分の事業に対するメリット・デメリットをよく把握し、控除や特例を活用しましょう。
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